核シェルターとは?市場の今と大型扉メーカーが知っておきたい需要動向

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シェルター

核シェルターとは、核爆発による爆風・熱線・放射線や放射性降下物から人を守るために設けられた空間のことです。近年は防災意識の高まりを受けて、日本核シェルター協会への問い合わせも増えていると報じられています。

国内の核シェルター市場はまだ黎明期にあり、核シェルターの性能に関する国としての統一基準は整備されておらず、施工実績の公開も限られているのが実情です。

そのため導入を検討する際は、発注者自身が性能の根拠を見極める視点が欠かせません。

本記事では、核シェルターの基礎知識、需要が増えている背景、気密性・防爆性の要となる扉の重要性、導入時の注意点、相談先となる特殊扉メーカー3社を順に解説します。検討の第一歩として判断材料をそろえられる内容にまとめました。

シェルター用の扉は性能の見極めが肝心です。防爆・防水など機能別に、自社に合う産業用扉の製造会社を比較するならこちらから。 

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出典:ヒロシマ平和メディアセンター(2026年4月1日)

目次

核シェルターとは何か(施設・住宅に組み込む防災シェルターの基礎)

核シェルターを検討する前提として、まず基本的な定義と防護の仕組みを押さえておくことが大切です。ここでは、地下空間が有効とされる理由や、平時の活用を前提とした「デュアルユース」の考え方まで順に解説します。

核シェルターの定義と役割

核シェルターとは、核爆発によって生じる爆風・熱線・放射線、そして後から降り注ぐ放射性降下物(爆発で舞い上がった放射性物質を含むちりや灰)から、人の命を守るための防護空間です。

核爆発の被害は一種類ではなく、衝撃波による建物の損壊、熱線による火災、目に見えない放射線による健康被害が同時に起こりうる点が特徴です。

そのためシェルターには、頑丈な構造体に加えて、外気を遮断する気密性や、汚染された空気を取り込まない換気の仕組みが求められます。

日本核シェルター協会は、核シェルターを地震や津波などの自然災害にも有効な「防災シェルター」と位置づけています。

有事専用の設備ではなく、施設全体の防災力を底上げする設備として捉えることが、検討の出発点になるでしょう。

実際に国内でも、桜島には噴石から身を守る「退避壕」が全国最多の32カ所整備されており、災害用シェルターとしての実績があります。

出典:「シェルター考 民間防衛」

出典:日本核シェルター協会 公式サイト

なぜ地下が有効なのか

地下が核シェルターに適しているとされる最大の理由は、周囲の土やコンクリートが放射線と熱線を遮る壁として働くためです。

実例として、広島の原爆では、爆心地近くにあった鉄筋コンクリート造の「燃料会館」の地下にいた男性が生き延びたことが知られています。

原子炉工学が専門の奈良林直・北海道大学名誉教授も、地下には核爆発時の放射線や熱線を遮断する効果があると解説しました。

同氏は米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)の資料をもとに、屋外を1とした場合、地下1階では放射線防護係数が200に達すると説明しています。

放射線防護係数とは、屋外と比べて放射線の影響をどの程度抑えられるかを示す指標で、数値が大きいほど高い防護効果を示すものです。

この数値からは、既存の地下空間にも一定の防護効果が期待できるといえます。ただし、実際の防護性能は構造の厚みや出入口の仕様によって大きく変わるため、個別の検証が欠かせません。

出典:産経新聞「シェルター考 民間防衛」

核シェルターを平時の駐車場や施設として利用しながら有事の避難空間として備えるデュアルユースの図解 

平時にも使える「デュアルユース」という考え方

核シェルターの導入を検討する際、多くの担当者が気にするのが「有事にしか使わない設備に投資する意味はあるのか」という点です。

その答えの一つとなるのが、平時と有事の両方で空間を活用する「デュアルユース」という考え方です。日本核シェルター協会の池田時浩理事長によると、フィンランドの核シェルターは平時には駐車場やスポーツ施設として使われています。

施設の平時利用によって収益性を確保し、導入・維持管理にかかる費用負担の軽減につなげられる可能性がある点が、この仕組みの利点です。

また、同協会の視察報告によると、フィンランドでは床面積1,200㎡以上の建物にシェルターの設置義務があります。

日本の企業や公共施設でも、地下駐車場や備蓄倉庫などを平時に活用しながら、有事の避難空間として備える発想は応用しやすいでしょう。

シェルターを「眠らせる設備」ではなく「日常的に使う設備」として設計することが、投資判断の納得感を高めるポイントになります。

出典:産経新聞「シェルター考 民間防衛」

出典:日本核シェルター協会「フィンランド・エストニア シェルター視察報告」

需要が増えている背景

核シェルターへの関心が高まっている背景には、国内の避難施設の整備状況と、行政・民間双方の動きがあります。

ここでは、国内の地下避難施設の少なさや海外との差など、数値で確認できる外的要因から需要の広がりを整理します。

国内の地下避難施設は人口の5.9%しかカバーできていない

日本国内で避難先として指定されている施設のうち、地下にあるものはごく一部にとどまります。2026年4月時点で、国内の指定済み緊急一時避難施設は6万2238カ所 。

緊急一時避難施設とは、弾道ミサイル攻撃などの際に住民が一時的に身を寄せるため、国民保護法に基づいて指定される建物や地下施設のことです。

このうち地下施設は4540カ所で、人口カバー率はわずか5.9%にとどまっています。人口カバー率とは、施設に収容できる人数が地域の人口に対してどの程度の割合を占めるかを示す指標です。

単純計算では、地下に避難できるのはおよそ17人に1人程度になります。

さらに、NBC(核・生物・化学)兵器への対応を前提とした核シェルターに至っては、ほぼゼロとされています。

地下空間そのものが限られているうえ、既存の地下施設も核への備えを前提としたものではない点に、新たな需要が生まれる余地があるといえるでしょう。

海外との整備状況の差

海外に目を向けると、日本との整備状況の差はより鮮明になります。内閣官房の令和6年度調査による主要国の人口カバー率は、次のとおりです。

国人口カバー率形態想定滞在時間主な仕様
韓国約331%地下数時間2カ所以上の出入口
スウェーデン66%地上または地下3日程度NBC攻撃への防護機能
フィンランド86%地上または地下3日程度NBC攻撃への防護機能
スイス100%地下数時間から数日NBC攻撃への防護機能
シンガポール非公表地上または地下数時間地下鉄駅に化学除染室

スイスは地下施設で人口カバー率100%を確保しており、フィンランドやスウェーデンもNBC攻撃への防護機能を備えたシェルターを整備しています。

韓国は約331%と人口を大きく上回る収容力を持ち、出入口を2カ所以上設ける仕様が特徴です。

スイスやフィンランドなどの欧州諸国では、NBC兵器に対応する地下シェルターが広く普及しているとされます。

日本の地下の人口カバー率5.9%と比べると、その差の大きさが数値として表れています。こうした国際比較も、国内で整備を検討する動きを後押しする要因の一つです。

行政・自治体でも整備の動きが始まっている

防災意識の高まりを受けて、国や自治体でも避難施設の整備に向けた動きが始まっています。政府は2026年3月末に示した基本方針で、2030年までに全市区町村で人口カバー率100%を達成する目標を掲げました。

重点が置かれているのは緊急一時避難施設で、1〜2時間程度の短時間の避難が想定されています。

ただし、この目標は地上・地下を合わせた数値であり、安全性が高いとされる地下単体の目標値は示されていません。

基本方針では、海外の例を参考にした核シェルターの調査・研究にも触れられています。一方で、具体化へのハードルは低くないとも報じられています。

自治体レベルでも、東京都が地下鉄駅の防災備蓄倉庫をシェルターに改修するなど、具体的な整備が進み始めました。

こうした公共案件の状況や課題は、導入時の注意点とあわせて後ほど紹介します。

民間からの相談も増えている

行政の動きと並行して、民間からの関心も高まりつつあります。内閣官房によると、国や自治体が管理する核シェルターは、現時点で国内に存在しません。(2026年4月1日時点 )

そうしたなかで、日本核シェルター協会への問い合わせは増えていると報じられています。

国内では、東京都内の官公庁や大企業の本社でさえ、NBC攻撃に対応できるシェルターはほぼ皆無とされます。

その一方で、国の対応に先駆けて、民間企業が独自に核シェルター関連の製品を開発する動きも出てきました。

企業のBCP(事業継続計画:災害時などにも重要業務を続けるための計画)の観点からも、従業員や来訪者を守る避難空間の確保は検討テーマの一つになりつつあります。

需要はまだ立ち上がりの段階ですが、だからこそ早めに情報を集め、信頼できる相談先を見極めておく意義は大きいでしょう。

出典

産経新聞「シェルター考 民間防衛」

日本経済新聞(2026年3月31日)

ヒロシマ平和メディアセンター(2026年4月1日)

一般的なシェルターと「大型扉・特殊扉」の関係(開口部の気密性・防爆性が要)

核シェルターの防護性能は、壁や天井の厚さだけで決まるわけではありません。人や物資が出入りする開口部、つまり扉の気密性・防爆性こそが、シェルター全体の性能を左右する要になります。

シェルターの弱点は開口部

どれほど厚いコンクリートで囲まれた空間でも、出入りのための開口部は必ず必要です。開口部は壁や天井に比べて構造上の弱点になりやすく、爆風の圧力や外気、水が入り込む経路にもなりえます。

内閣官房の特定臨時避難施設に関する技術ガイドラインでは、外部に面する壁やスラブについて、厚さ30cm以上の鉄筋コンクリート造とする仕様が示されています。

壁や天井でこの水準を確保しても、扉の性能が見合っていなければ、そこがシェルター全体の防護性能を下げる原因になりかねません。

また、特定臨時避難施設に関する内閣官房の技術ガイドラインでは出入口を2カ所以上とすることが示されており、韓国のシェルターも同様の仕様を採っています。

出入口が増えれば扉の数も増えるため、開口部の設計はシェルター計画の中心的な検討項目といえるでしょう。

核シェルターでは出入口となる扉が爆風・外気・浸水の侵入経路になりやすいことを示した図解

 

核シェルター用の扉に求められる性能

核シェルター用の扉には、一般的な建物の扉とは異なる複数の性能が同時に求められます。主な性能は次の4つです。

性能役割・確認ポイント
耐爆風圧爆発による急激な圧力に耐え、変形や破損を防ぐ。想定圧力と試験・計算の根拠を確認する
気密性外気の流入を防ぎ、放射性降下物や汚染された空気が室内へ入るのを抑える
水密性地下シェルターへの豪雨などによる浸水を防ぐ
開閉機構停電時でも開閉できるか、操作人数や所要時間を確認する
  • 耐爆風圧:爆発で生じる急激な圧力に耐え、変形や破損を防ぐ性能で、この性能を備えた扉は防爆扉と呼ばれます。想定する圧力と、その根拠となる試験や計算を確認することが重要です。
  • 気密性:扉を閉じた状態で外気の流入を防ぐ性能です。放射性降下物や汚染された空気を室内に入れないために欠かせません。
  • 水密性:浸水を防ぐ性能です。地下に設けることが多いシェルターでは、豪雨などによる水の流入への備えとして重要になります。
  • 開閉機構:有事でも確実に開け閉めできる仕組みです。停電時の開閉方法や、操作に必要な人数・所要時間も確認しておく必要があります。

産経新聞も、防爆扉の耐衝撃性や換気装置の仕様が国によって制度化されれば、参入企業が増え、市場の活性化につながる可能性を報じています。

扉の性能は重要な論点として認識されているものの、現時点では統一された仕様の物差しがない状態です。

扉単体ではなく、換気設備や躯体との組み合わせで性能を検討する視点も欠かせません。

防爆扉の選び方や施工事例について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。 

防爆扉の製造前に押さえる3ポイントからおすすめ製造会社3選を紹介

「扉付きシェルター」の扉は、核シェルター用の防爆扉とは限らない

シェルターを検討する際は、「扉が付いている」ことと「核シェルター用の防爆扉である」ことを分けて考える必要があります。

一般的な防災用の扉や重厚な扉であっても、爆風圧・気密・水密といった性能を核シェルター向けに想定して設計されているとは限りません。

「防爆」「核対応」と表記されている場合でも、想定している圧力や試験条件の根拠を確認することが大切です。

国として統一された基準がない現状では、同じ表記でも意味する性能が製品ごとに異なる可能性があるためです。

確認の際は、どのような条件で試験や計算を行ったのか、その結果を資料として示せるかを事業者に尋ねるとよいでしょう。

性能の根拠を具体的に説明できるかどうかは、相談先を見極める判断材料にもなります。

扉が付いたシェルターと性能根拠を確認した核シェルター用防爆扉の違いを示した比較図

 

国内で防爆扉を手がける企業はまだ限られている

核シェルター用の防爆扉を扱える国内企業は、現時点ではまだ多くありません。産経新聞が掲載した「シェルター設備を取り扱う主な国内企業」の表では、防爆扉の取り扱い企業としてイトーキ・三和鋼業・クマヒラの3社が挙げられています。

なかでもイトーキは、国の対応に先駆けて核シェルター用の防爆扉を開発したと報じられています。同紙は、国産シェルターの普及には量産化による低価格化が不可欠だとも指摘しました。

取り扱い企業が限られているからこそ、発注者側は各社の実績や技術の根拠を比較し、自社の条件に合う相談先を選ぶことが重要です。各社の特徴は、後ほどおすすめ3選で詳しく紹介します。

出典:産経新聞「シェルター考 民間防衛」

導入を検討する際の注意点

核シェルター市場は黎明期にあり、国内では施工実績の公開もまだ多くありません。

導入を検討する担当者が押さえておきたい最大の注意点は、扉を含む核シェルターの性能について、国としての統一的な基準や認定制度が整備されていないことです。

ここでは、基準がないことによるリスクや日本特有の条件、国内事例、運用の課題を順に解説します。

核シェルターの性能に関する国の統一基準が整備されていない

現在、日本には扉を含む核シェルターの性能を定めた、国の統一基準や認定制度は存在しません。

既存の制度として参考になるのは、先島諸島で整備が進む特定臨時避難施設向けの、内閣官房の技術ガイドラインです。

このガイドラインでは、避難期間を2週間程度と想定し、外部に面する壁やスラブを厚さ30cm以上の鉄筋コンクリート造とすることなどが示されています。

しかし、このガイドラインは核・生物・化学(NBC)兵器による攻撃を想定しておらず、特殊な濾過フィルターなどの整備は事実上先送りされています。

つまり、核シェルターとして求められる性能までは、国の指針でもカバーされていないのが現状です。

産経新聞も、国産シェルターの普及に向けて国による統一基準の策定が急務だと報じました。

同じ記事で、日本核シェルター協会の池田時浩理事長は、コストが導入の最大の壁だと指摘しています。

そのうえで、基準を満たした設備に固定資産税の軽減などの優遇措置を設ければ、民間の整備は進むと提言しました。優遇措置の前提となる「基準」そのものが、まだ整っていない段階だといえます。

業界側では、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会に、地下シェルターに求められる性能・仕様の在り方を検討するワーキンググループが設けられています。

池田理事長も学識委員として参加しており、基準づくりは業界側で検討が始まった段階です。発注者から見れば、性能を客観的に比べるための共通の物差しがない状態で判断を迫られることになります。

基準がないことで起きうるリスク

国の統一基準がない状況では、「シェルター用」「防爆仕様」といった表記に、共通の定義や裏付けがありません。

そのため、核シェルターに関する専門的な知見の程度にかかわらず、事業者がシェルター向けの製品や工事をうたうことができてしまいます。性能を客観的に比べる物差しがないため、発注者側が性能の根拠を見極める必要があります。

たとえば、同じ「防爆」という表記でも、どの程度の圧力を想定し、どのような試験や計算で確認したのかは、製品ごとに異なる場合もあるでしょう。

見た目の重厚さや価格だけで選ぶと、有事に想定どおりの性能を発揮できないおそれも否定できません。

こうしたリスクを避けるには、実績や性能の根拠を示せる専門メーカーに相談することが重要です。

試験データや設計の考え方を資料で提示できるか、過去に類似の特殊扉を手がけた実績があるかは、相談先を選ぶ際の重要な確認点になります。

海外基準をそのまま当てはめられない理由(日本特有の条件)

核シェルターの整備で先行するスイスやフィンランドなどは、制度や基準を持っています。国内に統一基準がない日本は、現状ではこうした海外の制度や基準を参考にせざるを得ません。

ただし、先行国とは地盤・地震・水害・湿度などの条件が異なるため、海外の基準をそのまま当てはめるのは難しいと考えられます。

日本は高温多湿な気候で地震が多く、近年は線状降水帯(発達した雨雲が列をなし、同じ場所に強い雨を降らせ続ける現象)などによる集中豪雨への備えも必要です。

特に地下空間では、湿気や結露によるカビの発生を防ぐ対策が欠かせません。また、豪雨による浸水を想定し、扉の水密性能についても確認しておく必要があるでしょう。

浸水を防ぐ性能に特化した水密扉のように、防爆性能に加えて水への備えもあわせて検討する視点が重要になります。

日本大学危機管理学部の福田充教授は、ミサイル攻撃だけでなく原発事故や自然災害にも対応できる「オールハザード型」のシェルター整備を提唱しています。

都市部でも条件の違いは大きく、麻布十番駅のシェルター化を進める東京都の担当課長は、海外のシェルターを参考にしても「東京にそのまま当てはめるのは難しい」と語りました。

災害の多い日本では、有事への備えと自然災害への備えを一体で考えることが、現実的な選択肢といえるでしょう。

水害対策として扉に求められる水密性能や、防水扉・止水扉との違いは、こちらの記事で詳しく解説しています。 

【大型扉・特殊扉】水密扉とは?防水扉・止水扉の違いと浸水対策における役割

公共案件でも手探りが続いている(国内事例)

公共分野でも、シェルター整備は始まったばかりで、手探りの状態が続いています。東京都は、港区の都営地下鉄大江戸線・麻布十番駅の地下約16mにある防災備蓄倉庫(約1400㎡)を、計約42億円を投じてシェルターに改修する計画です。

工事はすでに始まっていますが、完成時期や収容人数は未定のままとされています。

都心の地下はインフラが複雑に入り組んでいるため外側への拡張が難しく、内壁を厚くすると収容人数が減るというジレンマも抱えています。

都は東京駅近くの都八重洲駐車場にも、2カ所目の独自シェルターを整備する予定です。

沖縄県の先島諸島では、宮古島市・石垣市・与那国町・竹富町・多良間村の5市町村で特定臨時避難施設の整備が進められています。このうち宮古島市では、地上の体育館と一体型の地下シェルターを令和10年度末の完成をめざして整備中です。

収容人数は約500人で、建設費は体育館と合わせて約160億円、維持費は10年間で約1億円と見込まれています。

これらの事例でも、想定すべき爆発規模や必要な防爆性能について、国として統一的な指針が示されていないのが実情です。先島諸島のガイドラインはNBC攻撃を想定しておらず、麻布十番の計画も完成時期や収容人数が定まっていません。

公共案件でも条件設定に時間を要している現状を踏まえると、民間の施設で検討する際にも、要件を一つずつ専門家と詰めていく姿勢が求められます。

「つくって終わり」ではない:運用の課題

シェルターは、完成すれば役割を果たせる設備ではありません。広島市(人口約117万人)では、緊急一時避難施設が461カ所指定されており、地上と地下を合わせた人口カバー率は100%を超えています(令和8年4月現在)。

一方で、一般市民が参加した実動訓練は平成29年に1度実施されただけです。

東京23区と政令指定都市の計43自治体のうち、約7割は国との共同訓練を実施した経験がないとされます。

施設を整えても、点検や訓練などの運用が伴わなければ、有事に十分機能しないおそれがあります。

特に扉は、長期間動かさないと開閉機構の不具合に気づけない可能性もあるため、定期的な点検と保守の体制づくりが欠かせません。

日本核シェルター協会の池田理事長は、核シェルターは「使われずに済むこと」が最善の設備だと述べています。だからこそ、使われないことを前提にしながらも、いざというときに確実に動く状態を保つ運用が重要です。

導入を検討する段階から、平時の用途や点検の方法、有事の手順まで見据えておくことで、投資を無駄にしない備えにつながります。

核シェルターを平時利用・点検・訓練・見直しによって継続的に維持する運用サイクルの図解

 

導入検討時に確認すべき5つのチェックリスト

ここまでの注意点を踏まえ、核シェルターや扉の導入を検討する際に確認すべき項目を5つに整理しました。

国の統一基準がない現状では、以下の項目について事業者から具体的な根拠や説明を受けることが、性能を見極める第一歩になります。

▢ 開閉方法:手動・電動の別、停電時に開閉できるか、操作に必要な人数と所要時間を確認しましょう。

▢ 耐爆風圧:想定している圧力と、その根拠となる試験や計算の内容が示されているかを確かめます。

▢ 気密・水密性能:日本の豪雨や高湿度に配慮した性能を備えているか、結露やカビへの対策も含めて確認が必要です。

▢ 運用方法:平時の用途、点検の頻度、有事の手順、保守体制まで提案を受けられるかを確認しましょう。

▢ その他の特殊性能:放射線遮蔽性能や、NBC対応の換気装置との連携など、ほかの設備と組み合わせた性能も確認しておきましょう。

これらの項目を複数の事業者に同じ条件で確認すれば、提案内容を比較しやすくなります。

出典

産経新聞「シェルター考 民間防衛」

日本核シェルター協会 公式サイト

おすすめ3選(大型扉・特殊扉に強みを持つ製造会社)

核シェルターの扉を検討する際は、防爆・気密・水密などの性能を一社でどこまで相談できるかが重要です。

ここでは、報道で防爆扉の取り扱い企業として紹介された三和鋼業・イトーキ・クマヒラの3社を、共通の比較軸で紹介します。3社の特徴を比較すると、次のとおりです。

会社事業の中心シェルター関連の取り組み扉の主な特殊性能向いている人
三和鋼業大型扉・特殊扉の専門メーカー特定臨時避難施設向け防爆扉を製品化/2025年7月に日本核シェルター協会へ入会 防爆・耐圧、防水、防音大開口の扉や防爆・水密をまとめて相談したい企業・施設
イトーキオフィス家具・空間づくり、設備機器2024年にマルチ防災シェルター扉を開発耐衝撃、気密水密、放射線遮蔽製品化された扉の仕様を確かめて検討したい企業・施設
クマヒラ金庫・セキュリティシステムなどの総合セキュリティ報道で防爆扉の取り扱い企業として掲載防水・水密、放射線遮蔽、防御、気密防犯設備とあわせて施設全体の防護を考えたい企業・施設

三和鋼業:防爆と水密を一社で相談できる大型扉・特殊扉の専門メーカー

sanwa
引用元:三和鋼業
スクロールできます
項目詳細
会社名三和鋼業株式会社
住所兵庫県尼崎市久々知西町2-39-2
電話番号06-6429-8456
公式サイトhttps://sanwa-door.jp/

三和鋼業は、兵庫県尼崎市に本社を置く大型扉・特殊扉の専門メーカーです。創業50年以上の実績があり、重い扉を軽く安全に動かす技術を強みに、開口部の仕様に合わせた設計から製作、保守点検までを一貫して手がけています。

防音/防爆ドアや、水害に備える防水ドアシリーズ「アクアスクード」を展開し、防爆扉は必要な耐衝撃の圧力をもとにフルオーダーメイドで提案が可能です。

特定臨時避難施設向けの対策扉として、数十トンから数百トンに至る耐風圧性能を持つ防爆扉も製品化しています。

2025年7月には、これまでの防爆扉・耐圧扉の知見を活かすため、日本核シェルター協会に入会しました。

防爆扉と防水ドアの双方を扱っているため、爆風への備えと浸水対策をあわせて相談できる点が特徴です。

大開口の扉や防爆・水害対策をまとめて検討したい企業・公共施設では、相談先の候補になります。個人宅への対応可否は、案件の条件を伝えたうえで確認するとよいでしょう。

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▼三和鋼業の特徴とは?気になる施工実績も紹介

株式会社イトーキ:金庫技術を起点に特殊扉を手がけ、シェルター扉を製品化

イトーキ公式HP画像
引用元:イトーキ公式HP
会社名株式会社イトーキ
住所〒103-6113
東京都中央区日本橋2-5-1 日本橋髙島屋三井ビルディング
電話番号0120-164177
公式サイトhttps://www.itoki.jp/

イトーキは、オフィス家具の製造販売や空間づくりに加え、公共施設などに向けた設備機器事業も展開する企業です。創業以来の金庫技術を発展させ、1966年から特殊扉を手がけてきました。 

2024年には、耐衝撃性・気密水密性・放射線遮蔽性能を備えた地下シェルター向け特殊扉「BOUNCEBACK」を開発し、日本核シェルター協会のモデルルームに設置しました。

企画・設計から部品調達、組み立てまで国内で完結する日本製で、耐衝撃400kN/㎡の強度を持ちながら、重さ約1.4トンの扉を手動で開閉できる設計とされています。

製品化された扉の仕様を確かめながら検討したい企業や公共施設に向いているでしょう。 

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▼株式会社イトーキ(ITOKI)はどんな会社?特徴や評判、取り扱いのある特殊扉も紹介

株式会社クマヒラ:多様なリスクに合わせた特殊扉を手がける総合セキュリティ企業

クマヒラ公式HP画像
引用元:クマヒラ公式HP
会社名株式会社クマヒラ
住所〒103-8420
東京都中央区日本橋本町2-5-1 日本橋アステラス三井ビルディング17階
電話番号03-3270-4381
公式サイトhttps://www.kumahira.co.jp/

クマヒラは、金融機関向けの金庫室設備から入退室管理システム、セキュリティゲートまで、幅広いセキュリティ製品を手がける総合セキュリティ企業です。

特殊扉の分野では、河川の氾濫や津波による浸水、放射性物質を含む空気の漏洩、外的攻撃による破壊・侵入など、さまざまなリスクから施設を守る扉を提供しています。

ラインナップは防水扉・水密扉、遮蔽扉、防御扉、気密扉の4種類です。

防御扉は、物理攻撃による破壊や、実験施設などで発生する爆発の圧力に耐える構造を備えた扉として紹介されています。

顧客のニーズに合わせたオーダーメイド設計・製造を行い、長年培った製造技術を応用して複数の性能を組み合わせた扉もつくれる点が特徴です。報道でも、防爆扉の取り扱い企業として名前が挙げられています。

核シェルター向けとしての具体的な仕様は、個別に問い合わせて確かめるとよいでしょう。

防犯・セキュリティ設備とあわせて、施設全体の防護を一社で検討したい企業や公共施設に向いています。

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よくある質問(FAQ)

核シェルターの導入を検討する際に生じやすい疑問を、4つのQ&A形式でまとめました。いずれの質問も、国の統一基準がない黎明期市場であることを前提に、確認すべきポイントを整理しています。

Q1.国の認定制度や基準はありますか?

A.現時点では、扉を含む核シェルターの性能について、国の統一基準や認定制度はありません。

先島諸島の特定臨時避難施設には内閣官房の技術ガイドラインがありますが、核・生物・化学(NBC)兵器による攻撃は想定されていません。

業界側では、レジリエンスジャパン推進協議会のワーキンググループで、地下シェルターに求められる性能・仕様の検討が進められています。基準が整うまでは、事業者ごとに性能の根拠を確認することが大切です。

Q2.既存の地下駐車場や倉庫をシェルターにできますか?

A.既存の地下空間を活用できる可能性はありますが、個別の検証が欠かせません。

東京都は、麻布十番駅の地下にある防災備蓄倉庫をシェルターに改修する計画を進めています。

一方で、都心の地下は外側への拡張が難しく、内壁を厚くすると収容人数が減るという課題も指摘されています。既存施設の転用を考える場合は、躯体の厚さや出入口の数、扉の性能まで含めて専門家と確認するとよいでしょう。

Q3.平時に使わないと投資が無駄になりませんか?

A.平時にも空間を活用する「デュアルユース」を前提にすれば、投資の意味を持たせやすくなります。フィンランドでは、核シェルターが平時に駐車場やスポーツ施設として使われ、その収益で維持管理費をまかなっています。

日本の企業や公共施設でも、地下駐車場や備蓄倉庫として日常的に使いながら、有事の避難空間として備える考え方が参考になるでしょう。日常的に使うことで、扉の開閉や設備の不具合に気づきやすくなる可能性がある点もメリットです。

Q4.個人宅でも相談できますか?

A.三和鋼業では住宅への特殊扉の施工例が確認できますが、核シェルター用扉を含む個人宅案件への対応可否は、設置条件を伝えたうえで個別に確認するとよいでしょう。

企業や公共施設に比べて規模は小さくても、地下に設ける場合は湿気や浸水への備え、扉の開閉方法など、確認すべき点は共通しています。

相談の際は、想定する用途や設置場所を伝えたうえで、扉の性能の根拠を確認するとよいでしょう。

⚠ 導入前に、必ず複数社へご相談ください

核シェルターは黎明期の市場であり、施工実績の公開もまだ多くありません。扉を含む性能について国の統一基準がないため、同じ「防爆」「シェルター用」という表記でも、想定する条件は事業者ごとに異なる可能性があります。

導入を検討する際は1社だけで判断せず、必ず複数社に相談して提案内容を比較してください。

その際は、想定圧力や試験条件、気密・水密性能、運用・保守体制について、根拠となる資料を示してもらうことをおすすめします。

出典

産経新聞「シェルター考 民間防衛」

日本核シェルター協会 公式サイト

三和鋼業株式会社 公式サイト

まとめ

核シェルターは、爆風・熱線・放射線や放射性降下物から人を守る防護空間です。仕様によっては、地震や風害、水害などの自然災害への備えにも活用できます。

国内の地下避難施設の人口カバー率は5.9%にとどまり、行政・自治体や民間でも整備に向けた動きが始まっています。

一方で、扉を含む核シェルターの性能に関する国の統一基準や認定制度は整備されておらず、施工実績の公開も限られている黎明期の市場です。

シェルターの防護性能を検討する際は、躯体だけでなく開口部の性能も重要です。

日本での設置では、防爆性能に加えて、設置場所の浸水リスクなどに応じて水密性能や気密性能も確認する必要があります。

導入を検討する際は、開閉方法、耐爆風圧、気密・水密性能、運用方法、その他の特殊性能の5項目を軸に、各社へ根拠を確認することが重要です。

防爆と水密をあわせて相談したいなら三和鋼業、製品化された扉の仕様から検討したいならイトーキ、防犯設備とあわせて施設全体の防護を考えたいならクマヒラが選択肢になります。

まずは複数社に相談し、自社の施設や目的に合った提案を比べるところから始めてみてください。

核シェルターの性能に関する国の統一基準が整備されていない現状では、想定する圧力や性能の根拠を具体的に示せる専門メーカーへ相談し、複数の提案を比較することが重要です。

三和鋼業では、防爆・水密をはじめとする特殊扉について、企業・公共施設の案件から個人宅まで相談を受け付けています。検討段階の疑問からでも、まずはお気軽にご相談ください。 

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